行動遺伝学とは何か
行動遺伝学とは「ある人の頭の良さや性格などのスペックが、どの程度遺伝の影響を受けているか」についての学問です。
安藤寿廉先生の書籍を参考に、私なりにまとめてみました。
スペックに影響を与える3つの因子
一卵性双生児(遺伝子も同じで家庭環境も同じ)や養子(遺伝子は違うが家庭環境が同じ)を調べた様々な研究から、
人のスペックに影響を与える因子は
- 遺伝
- 家庭(共有環境)
- 社会(非共有環境=家庭外環境)
という3つに分けられることが分かりました。
そして、スペックの種類によって3つの因子の影響バランスが異なることも分かりました。
IQ(知能)を決めるのは?
頭の良さ、すなわちIQ(知能)、認知能力、才能や能力とされる部分については、時期によって3つの影響バランスが異なりました。
児童期から青年期にかけて、遺伝4割+家庭4割→遺伝6割+家族2割に変化してたのです。社会の影響は共通して2割でした。
すなわち未就学児は遺伝と同じくらい家庭の影響を受けることが分かりました。
幼児教育で神童は作り上げることは可能だが、のちのち普通になってしまう理由と解釈しました。「十で神童、十五で才子、二十歳過ぎれば只の人」が的確ですね。
また科目別IQをみると、他の科目は上記同様でしたが、理数系(特に数学)は遺伝2割+家庭6割と上記と逆転していました。理数系科目は遺伝よりも家庭の影響が非常に大きいのは意外でした。
数学こそセンス(≒遺伝)の印象がありましたが、そのセンスは幼少期に培われたものということですね。そろばんや公文算数が習い事で人気である理由かもしれません。
性格(パーソナリティ)を決めるのは?
性格(パーソナリティ)、すなわち非認知能力や発達障害については、時期に関係なく遺伝と社会の影響が5割ずつで家庭環境の影響をほとんど受けませんでした。
すなわち、家庭の影響によって性格はほぼ決まらないことが分かりました。「遅刻や忘れ物が多い」「すぐキレる」「片付けられない」などは親のせいではないということですね。
見た目(身長や体重)を決めるのは?
見た目(身長、体重、指紋パターン)は、9割遺伝+1割が社会の影響を受けることが分かりました。
見た目の良し悪しは生まれながらに決まっているということですね。子供の身長は栄養でどうにかなる問題でなはく、高身長のパートナーと子作りするしかないわけですね。
一般的な印象との違いとは
一般的には、スペックを決める因子として以下の4つが考えられています。
- ガチャ(不変・外在)
- 遺伝(不変・内在)
- 環境(可変・外在)
- 努力(可変・内在)
行動遺伝学では、不変・可変に限らず外在的なものを「環境」と捉えており、また本人の自由意志でスペックがコントロール可能な点について触れられていませんでした。
したがって世間的には努力次第でスペックは調整可能と捉えられているということですね。
また、いわゆる「親ガチャ」は、ガチャだけでなく親の遺伝子や作りあげた環境も含むと考えられます。本人の努力以外の全てが親による影響と思うと子育ては恐ろしいですね。
行動遺伝学を子育てに活かすポイント
では、行動遺伝学を子育てに活かしていくために、親は何をしたらいいのでしょうか。私の考えた3つのポイントを紹介します。
家庭で知育・幼児教育に取り組む
「知育・幼児教育は意味がない」という点は議論されがちですが、行動遺伝学においては幼児期においては遺伝的な影響よりも家庭的な影響を受けることが分かっています。
したがって未就学児のうちに親が家庭内で良い教育の場を作りあげることは大切に感じられます。特に理数系の成績UPにつながるような数唱の習慣や簡単な実験は取り組むといいでしょう。
子供に合わせた社会的環境を用意する
「朱に交われば赤くなる」といいますが、行動遺伝学においても性格は遺伝的な影響と同様に社会的な影響も受けることが分かりました。
したがって子供の特性に合わせた習い事や学校選びを親が心がけることで、活き活きとした子供の姿がみられるでしょう。「子育ては個育て」ですね。
子供の精神的な特性をサポートする
行動遺伝学において性格は家庭的な影響をほぼ受けないことが分かりました。すなわち子供の性格を変えようとするのではなく、親が子供の精神的な特性をサポートする体制が望ましいと思いました。
片付けられない子にはおもちゃを増やさないようにする、忘れ物が多い子は一緒にチェックする習慣をつけるなど、親子で取り組むことが大切だと思いました。
さいごに
「遺伝で決まっているんだがらしょうがない」と悲観するのではなく、対策を考えたり経験を積んでいくことで人間は変化していけることを忘れないようにしたいですね。
以下は、読んで面白かった関連書籍です。どれも行動遺伝学に触れた本なので興味があれば読んでみてくださいね。
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